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TCネット:治療共同体ネットワークとは

TCネット:治療共同体ネットワークは、欧米で展開されるアディクションを対象とした治療共同体に感銘を受けたメンバーによって、2014年より治療共同体研究会として始まりました。

治療共同体モデル

私たちが参考にした治療共同体モデルは、世界各国で展開されている支援モデルの1つです。治療共同体モデルは、大きく分けると、イギリスの精神科病院の中で民主的な手法を取り入れた実践と、アメリカで依存症当事者が始めた入所型共同体シナノンの実践という2つの流れがあります。

 

両者の実践の共通点は、専門家を中心とする伝統的な手法に対して新しい立場をとったことと、安全で民主的な環境の中でセルフヘルプの機能を活かし個人と共同体の成長を目指したことなどです。TCネットでは、治療共同体モデルの中でも、アディクションを対象とした発展した治療共同体モデルを中心に取り上げています。

 

アディクションを対象とした治療共同体モデルには、以下の9つの要素があると定義されています。

 

積極的な参加
メンバーシップ・フィードバック
役割のモデリング
個人の変化を導くための総合的な形式
共有された基準と価値
構造とシステム
開かれたコミュニケーション
個人間またはグループでの関係

独自の言葉の使い方

 

De leon1995Therapeutic Communities for Addictions: A Theoretical Framework

 

 

ここではその中から、TCネットの活動に大きく影響している点について、いくつかご説明したいと思います。

 

1つは、②メンバーシップ・フィードバックです。日本では「言いっぱなし、聞きっぱなし」の方法が広く活用されていますが、メンバーシップ・フィードバックとは、その正反対の方法と言えます。グループの中での誰かの発言に対して、他の参加者が質問やフィードバックを伝えることで、発言した人をサポートします。

 

次に、⑥構造とシステムについてですが、アディクションを対象とした治療共同体モデルには、独自の段階(階層・ステージ)制という枠組みがあります。

これは、回復の進行を段階的に設定し、その中で施設内での役割や個人の自由などがステップアップしていく枠組みです。そして、このような枠組みやグループが安全に行なわれるためには、共同体の理念を共有していることがとても重要になります。

 

このような治療共同体モデルのもっとも象徴的なグループワークの手法が、治療共同体エンカウンター・グループです。

 

治療共同体エンカウンター・グループ

エンカウンター・グループは、心理学者のロジャースが開発したグループカウンセリングの手法で、 1960年代アメリカの人間性回復運動を通して広く知られるようになりました。依存症を対象とした治療共同体モデルの原型であるシナノンで行なわれていたグループの手法も、その1つとされています。

シナノンの実践の特徴は、回復者スタッフという役割を生み出したことや、独自のグループの手法などがあります。しかしこうした多くの遺産と同時に、閉ざされた環境の危険性など教訓も残したとされています。その後、シナノンの遺産と教訓を活かした治療共同体モデルは世界各国へと広まっていきました。治療共同体エンカウンター・グループは、このような治療共同体モデルの中で独自に発展してきたグループワークの手法であり、治療共同体エンカウンター・グループは共同体の縮図とされています。

 

 

治療共同体ネットワークの取り組み

2010年頃から欧米で実践される治療共同体モデルやエンカウンター・グループを日本で導入する試みが始まりました。メンバーや民間依存症回復支援施設のスタッフや仲間たちによって手探りでグループが始まり、経験を積み重ねる中で日本独自のグループが創られてきました。2017年に初版ファシリテーション・ガイドとワーク集を作成するにあたり、グループの名称を<エンパワメント・グループ>と名づけました。

 

エンパワメント・グループの特徴は、質問とフィードバックです。相手に気づきを与える質問と、その人が気づいてない肯定的な側面を伝えるフィードバックが、安全な環境の中で行なわれることで、グループに参加する一人ひとりに気づきと回復のための力がもたらされます。

 

エンパワメント・グループで大切にしていることは、「ものごとの解決ではなく感情の解決」です。自分自身の感情を理解し、適切な形で表現していくエモーショナル・リテラシーの獲得を目指していきます。

 

TCネットの目的は、

エンパワメント・グループを通して、とらわれから解放され、ありたい自分に向かうプロセス(回復)を実感する機会を提供することです。

 

このようなエンパワメント・グループは、アディクションからの回復だけでなく、さまざまな生きづらさからの回復や援助職者自身のセルフケアの場として、グループの力を実感した人たちによって少しずつ広がりをみせています。

 

 

私もエンパワメント・グループで感銘を受けた一人です。私はエンパワメント・グループを通して新しい生き方を見つけることができました。こうして、治療共同体やエンパワメント・グループに関心をもってくれる方に、また一人出会えたことが、最大の喜びです。エンパワメント・グループが、新しい生き方を見つけるお手伝いのひとつになることを願っています。

 

治療共同体ネットワーク

引土 絵未

 

 

 

本ホームページは、令和二度厚生労働行政推進調査事業費補助金医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究事業)にて作成され、

令和3-5年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)基盤研究(C)アディクション回復支援における治療共同体モデル実践のための研修モデル開発研究にて運営されています。